*悪役オムニバス*【短編集】
案の定、公園の中には子どもたちがいた。
浅く積もった雪の上。
膝でボールを跳ね上げる少年と、それを見つめる他の仲間たち。
嶺子は彼らに駆け寄った。
「僕もいれて」
首に巻いたマフラーを緩め、嶺子は言った。
公園にいた少年たちは、ぱっとみて小学生の中学年と言った所で、嶺子よりも少し背が高い。
『いいよ、一緒に遊ぼう』
嶺子は、彼らがそう言ってくれるだろうと期待していた。
彼らはしばらく、嶺子を見つめたまま呆然としていた。
そしてボールを置き、泥の混じった雪を手の中で丸め、
ひゅん、と嶺子に向かって投げた。
ぽこり、と雪玉は、見事に嶺子の鼻先に直撃した。
痛くはなかった。
しかしその冷たいものが鼻に入り、嶺子は狼狽して目を白黒させた。
そんなさなか、彼らはこぞって嶺子を指差した。
「くるんじゃねえよ」
「きもい」
「あっち行けよ」
少年たちは口々に言って、矢継ぎ早に、嶺子に雪玉を投げた。
ぽこり、と今度は額に雪玉が当たって砕けた。
なにがいけなかったのか。
彼らに爪弾きされた原因がわからぬまま、嶺子は慌ててその場を去った。