*悪役オムニバス*【短編集】
「ねえ、また今日もヤっちゃいなよー」
「こんな寒い日にヤれるわけねえじゃん。
また今度にするわ」
囃し立てる女たちの声。
それにこたえる男子生徒の声。
犯罪の域に達したことを、彼らは平気でする。
このような会話はよくあることだが、いつ聞いても、この声には戦慄する。
「おら、来いよ!」
美香の隣にいる小柄な女子生徒が、優菜の髪を引っ張った。
「今から、あそこの御堂に入れてあげる」
彼女は微笑んだ。
この神社は、曰く付きである。
神を祀るためではなく、バケモノを封じるために建てられたという、不気味な堂がある神社なのだ。
その御堂にひとたび足を踏み入れれば、そのバケモノに喰い殺されるとの都市伝説まである。
「いたっ」
優菜は小さく声を漏らす。
しかし体ばかりは無抵抗で、数人がかりで優菜の体は御堂へと引きずられて行った。
ぎい、と木の軋む音がする。
御堂の戸が開けられたのだ。
「おらよ」
優菜は御堂の中へと放り投げられた。
体を打ち付け、軽く呻く。
そうしている間にも、彼らは素早く御堂の戸を閉め、優菜をそこに閉じこめた。