*悪役オムニバス*【短編集】
「て、ごめ……?」
「犯されたのか、と聞いておるのだ」
漣の率直な言葉に、優菜は固まった。
その時の様子を思い出すことは容易だ。
痛みも、感触も、なにからなにまで、鮮明に脳裏に焼き付いている。
優菜はこくりとうなづいた。
「いつの世になっても、人の男というものは野蛮なものだ。
女の扱い方も知らぬ」
言うや、漣は優菜のうなじに手を滑らせた。
「ひ」
ひやりと冷たい手に、優菜は思わず情けない声を上げる。
「な、なにを……」
「そなたが儂を拒むなら、この場から今すぐ消え去るがよい。
もし儂の妻となる気があるのなら、うなづけ。
その代わり、妻となったからには、永久に、儂ら妖の世界で暮らしてもらうぞ」
漣は究極の選択を迫ってきた。
人として生きる日常を取るか。
人外のものとして生きる非日常をとるか。
普通の女子中学生なら、まず悩むところである。
しかし優菜は、少し考えるそぶりをして、すんなりとうなづいた。
漣の手に自らの手を添え、口元にはうっすらと笑みまで浮かべている。
「なら、私はあなたの妻になります」
優菜は迷いのない口調で言った。
「言うたな」
漣は目を輝かせ、舌なめずりをする。
冷たい手が華奢な少女の首筋を撫でた。
優菜を引き寄せ、その喉に口付ける。
猫の血をかけられたことで、薄めのセーラー服が体に張り付き、少女の滑らかな身体の線が浮かび上がっている。
「よい……甘美な身体じゃ。
人の子などには、勿体無いのう……」
唸るように呟くと、漣はセーラー服のリボンを解き、しずしずと少女の胸元を開いた。
大きく開かれた胸元からは、豊かな乳房と谷間が覗いている。
セーラー服から染みた猫の血が、肌にまでまとわりついている。
地肌についたそれを、漣はなんの抵抗もなく舐め取った。
白い肌に舌を這わせ、猫の血を味わう。
「っ……」
ぴくり、と優菜は身を震わせた。
激しくない、まるで小さな動物を扱うような愛撫に、顔をか赤らめる。
「ふうむ……」
漣がそこで動きを止めた。