*悪役オムニバス*【短編集】





途端、広間が歓喜の声に満ち溢れた。

妖たちが、揃いも揃って腕を伸ばし、盛大に歓声を上げている。


「よおし、じゃあ俺達(おら)は肉を調達してくるとしようか!
中でも取り分け、柔らかいやつをだ!」

「あら。じゃあアチシは、刺身用の心臓を取ってくるとするかねえ」

「なにいってやがる。
あいつらは生きたまま生で喰うのが美味いんだ。
解体しちまったら、鮮度が落ちちゃうだろうが」

「久しぶりのご馳走だ。
漣さまさま、ってやつだな」

「本当。
こんな機会でもないと、なかなか奴ら肉にはありつけないからねえ」


あちらこちらで、妖がそんな議論を始める。

宴というのだから、そのために出す料理の材料でも取ってくるつもりなのだろう。

どうやら彼らは肉の話をしているそうだが、優菜には何の肉なのか、彼らの話からはいまいち理解できない。

心臓を刺身にできて、生きたままで食べても美味しい動物など聞いたこともない。


「あの、奴らの肉ってなんですか?」


優菜は漣に問いかけてみる。

すると漣は、今までになく恍惚な表情で、ほくそ微笑んだ。


「そうか、そなたには話しておらんかったな」










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