*悪役オムニバス*【短編集】






*




周囲にこだます阿鼻叫喚。

教室に撒き散らされた、血、血、血……。


「いやあああ‼︎」

「助けてええええーッ‼︎」

「誰かっ、ああああッ‼︎」


悲鳴とともに教室に響き渡るのは、肉を裂く音と、血をすする音。

教室のあちらこちらで、妖たちがクラスメイトを喰らう光景が、優菜の目の前に広がっていた。

優菜を無視していた生徒が、足を引きちぎられて貪られる姿。

優菜に水をかけた生徒が、首を跳ね飛ばされる姿。

優菜の腕や足に画鋲を刺した生徒が、腹を喰い破られる姿。

優菜に蜂の死骸を食べさせた生徒が、頬の肉を噛みちぎられる姿。

優菜の制服に硝酸をかけた生徒が、妖の毒液に犯されていく姿。

……優菜を犯した生徒が、四肢の末端から喰い尽くされる姿。


妖たちは、本能のままにクラスメイトたちをむさぼり喰った。


中には、隙をついて教室の外へと逃げ出すものもいる。

しかし、この教室から出たところで、決して逃げられはしないことを、優菜はわかっていた。

この校舎一面に、妖が結界を張ったと、漣が言っていた。

いくら渡り廊下を突破できても、その先の結界を突破することはできない。






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