*悪役オムニバス*【短編集】






克利は近づいてきた優菜を見上げ、さらに血色を悪くした。


「ゆ、優菜……」

「気分はどう?
いい宴だと思うでしょ?」

「なっ、なにがいい宴だ!
なんで、こんな酷いことを!」


克利が喚いた。

しかし優菜は怯むどころか、そんな克利をみおろし、冷笑を浮かべている。


「あんたさ、自分の胸に聞いてみなよ。
これより酷いことが、思い当たるんじゃない?
たとえば強姦とか。
強姦とか強姦とか」


あからさまに言ってやると、克利が口を開いたまま震撼した。

ふふん、と優菜は微笑む。


「思い当たったでしょ?」

「た、たった“あれだけのこと”でっ。
ここまでしなくたって……!」


克利は必死に訴えた。

優菜はなにも言わない。

ただただ、口元に笑みを浮かべているだけであった。

そして、







ぼりっ……と。










< 91 / 100 >

この作品をシェア

pagetop