*悪役オムニバス*【短編集】
その手に生えた鋭利な爪で、克利の頬の肉を抉った。
「ぐぶばあッ‼︎」
頬に五本もの赤い線が走り、衝撃のあまり克利は床に倒れた。
優菜の爪の先には、克利の肉がこびりついている。
「ひっ……はあっ……!
ふひいいっ……!」
声にもならない痛みに、克利はうつむいて歯を噛み鳴らした。
「まだよ?」
優菜は矢継ぎ早に手を振り上げ、反対側の頬にも爪を走らせた。
ぼりっ、と肉がほじくられ、その赤い線から血が湧き出す。
「うぶ……ぶあ……」
頬を押さえることもままならず、克利は情けない声を漏らすばかりだった。
そんな克利に、優菜はすっと身体を寄せる。
「ねえ、痛い?」
優菜は眩い笑顔で聞いた。
「駄目だよお。
男の子が“これだけのこと”で折れちゃ。
ね?」
可愛らしく首を傾げて、優菜はさらに、克利の股の間へと手を滑らせる。
「ここ、覚えてるでしょ?
私をひん剥いて、無理矢理に貫いたの。
次はここを引きちぎろっか?」
「まっ……。
まっ……で……え……」
ぼろぼろと涙をこぼしながら、克利は懇願した。
優菜はしばらく克利を見つめたあとで、そっとそばから離れる。