*悪役オムニバス*【短編集】
「俺が……ま、ちが……て……。
ず……ずびば……せ……」
克利は正座し、深く深く、何度も頭を下げた。
しかし、優菜はなんの言葉も返さない。
「お願、ひ……します……。
なんで、も……言うこと……聞き、まず……から……。
どう……か……」
克利は頭を上下させ、朧げな言葉で泣きつく。
そんな克利の様子を、優菜は無言で凝視していた。
優菜の面差しは、さも気持ち良さげであった。
そして満面の笑みで手を合わせた。
「嬉しい、やっと反省してくれたのね。
本当に、なんでも聞いてくれる?」
聞くと、克利は光を宿した眼で顔を上げ、こくこくとうなづいた。
優菜は克利の前にしゃがみこみ、優しげな顔つきで向かい合う。
「じゃあね、私、どうしてもあなたにして欲しいことがあるの。
それは」
優菜は人形のような美貌を克利に近づけ、
「じゃあ死んで?」
と、克利の片目をくりぬいた。