*悪役オムニバス*【短編集】







いじめに関わった人物、無視していた人物、見て見ぬ振りをしていた人物。

総じて、クラスメイト全員及び担任教師。


あの怪物たちがなんなのかは、よくわからない。

しかし、彼らが人外の生き物であり、とても人の手に負える生き物でないと言うことは明白だ。

美香は優菜に対して、激しい怒りを覚えた。


(だからって、ここまでしなくたっていいじゃない!)


優菜のくせに!


美香は歯をきしませる。

進級する以前は、美香は優菜とも仲が良かった。

お揃いのヘアピンを買い、プリクラを撮り、遊びに出かけたこともあった。

優菜がーーー美香の彼氏に惚れられたりしなければ、事は全てうまくいっていたのだ。


『お前飽きちゃった。
俺、優菜に乗り換えるわ』


そう別れを告げられた日のことは、忘れもしない。

もちろん、諸悪の根源は優菜ではなく、尻軽な彼氏の方にある。

しかし、そんな理屈では収められなかった。

どうしても、憎悪から優菜をどん底へと突き落としてやりたくなった。

いわば八つ当たりのようなものだった。

徹底的にいじめ抜き、立ち直れないようにしてやる!

おとなしい性格ゆえに友人の少ない優菜と比べ、美香には男女の友達も多かった。

優菜へのいじめが始まれば、おのずと優菜のそばにいた者たちも彼女から離れ始め、ようやく、最高の環境が出来上がった。


そして、その悪行の数々が、いまこういう形で帰って来たらしい。


「う……うう……」


美香は落涙した。




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