いきば〜禁断の蕾〜(完結
こんな深夜に見回りなど
あり得ない


あるのは一つ


桜井は、そのまま足音が自分の部屋を通り過ぎるのを待った。

予め用意していた懐中電灯を持つと静かに廊下に出る

足音の持ち主は蕾の部屋の前で止まった

桜井には気づいて居ない。

まだ桜井にも暗くて誰か分からない


カチャカチャ


音がする。

直ぐにその影は蕾の部屋の扉を開けた。


今だ!


桜井は、懐中電灯に明かりを灯し
その者の顔を映し出した

「誰ですか?こんな夜分に」

桜井は、さも今来た風に装う

照らし出される顔

光に顔を一瞬伏せたが
何者かは直ぐに分かった


予想通りだ




「あれ、尚都様ですか?
そこは蕾様の部屋ですよ」

桜井は、キョトンとした様に言う

「いっ嫌、蕾が心配で」

あからさまに焦る尚都

「こんな深夜にですか?
駄目ですよ、勝手に扉開けちゃあ」

苦笑いする桜井

「そうだよね」

アハハ

尚都は苦し紛れに笑ってみせたが

チッ

と小さい舌打ちが聞こえた

開けた扉を閉め鍵を掛直す尚都

直ぐに桜井の横を通り自室に戻ろうとする。

早くこの場から離れたいのだろう。
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