いきば〜禁断の蕾〜(完結
「アイツを
これ以上苦しめたくない」

うつ向く初騎の頬を涙が伝うのが桜井には分かった



少し言葉に詰まる


「ですが…
ですがそれでは貴方の気持はどうなります?
蕾様の気持は?」

「どうにも成らない事なんだ」

切ないそうに吐き出された桜井の言葉を遮る初騎




「兄妹だからですか」


桜井は呟く

「そうだ」

初騎は、弱々しく呟く
頬伝う涙は止まらない

「そんなの関係無いじゃ無いですか」

思わず叫ぶ桜井

そこへ看護婦が入って来た

「また貴方達ですか
いい加減に為てください」

怒鳴る看護婦

先程の会話から
迷惑を感じた患者さんが伝えたのだろう。

「取り敢えず、今日は帰ります。
蕾様には初騎様ご自分でお伝え下さい」

頭を下げると病室を出る桜井

初騎は、それを確かめながら

「伝えられるか…
関係無い訳無いだろう」

呟いた。





ずっと前から思い出していた記憶



頭の中で回る


誰かの声




寝ている間


ずっと誰かが喋っていた。


その誰かも分かった



切ない声


苦しい想い


語りかけられた言葉




ずっと聞こえていた。




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