一生に二度の初恋を『あなたへ』


あの写真と同じ笑顔を無理矢理作った。


自分でも何をやってるのかも理解できなくて、次の言葉を発するまでに時間がかかった。

「なんてね……」



笑われるかもしれない、というか笑って欲しい。


『高梨は春じゃないだろ』それだけ言って、バカにしても良いから…。


何で沈黙なの?何か言わなきゃ他人の気持ちなんて分かんない。

そう言ったのは斎藤くんでしょ?


イライラが募って心の中で責め立てるような言葉が何度も込み上がる。



黙ってないで、何か言って。



心の中で叫んだわたしに冷静な自分が元に戻って来る。

最低だ。斎藤くんがわたしにくれた言葉で斎藤くんを責めるなんて。
本当に、どうかしてる。



ただいつものように、わたしを安心させる、言葉をまた欲しかった。


『わたしが代わりじゃいけませんか?』そう思っているわたしを貶してもいいから。


ーーガチャンと音がしてドアが閉まった。


スローモーションのように吐息がゆっくりと近づいてくる気配。


今から何が起こる?

分かるけど分からないフリをした。

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