一生に二度の初恋を『あなたへ』
「優……?」
どれだけの時間が経ったかは分からない。
でも、息が苦しくないということは、もしかしたら一瞬の出来事だったのかもしれない。
誰かの声で深い眠りから目覚めたように正気になった。
そこにいたのは、ついさっきまで一緒にいた三人。
「ご……ごめん……。忘れ物しちゃって取ってくるね」
状況を知らない結愛ちゃんでも、何か不穏なものを感じたのだろうか。廊下をバタバタと走っていった。
その音を聞いて、自分でも分かるほどに青ざめた。
気持ち悪いとか、恥ずかしいとか、自分に対する嫌悪とか。もぅ全部。
吐きそう……。
外は、さっきよりも酷い、バケツをひっくり返したような雨。
わたしは傘もささずに斎藤くんの家を飛び出した。