一生に二度の初恋を『あなたへ』
自分の感情が分からなくて、よく分からずに泣きたかった。
けど涙腺を制御する。歯を食いしばるようにして何とか涙を止める。
そのことに気をとられすぎて、雨に濡れていることさえも一瞬忘れていた。
瞬くんが傘を差し出してくれたことにもしばらく気づかなかった。
わたしがしてしまった行動の意味。
斎藤くんのキスの意味。
教えて欲しい。
斎藤くんのキスの答えは、もう確実と言っていいほど知ってる。けど、違う意味が他にもあるって信じたい。
あ……あぁ……。
涙が一粒零れ落ちた。
こんなややこしい思考回路に瞬くんを巻き込むのは駄目だ。このままだと言葉が制御できずに溢れ出して、巻き込んでしまう。
それに。もうすぐ言葉以外も…。
「ごめん!!大丈夫!!」
我ながら明るい声で言えたと思う。
「高梨さ……」
「ありがとう!!」
無理矢理に笑って瞬くんから離れると、嗚咽を堪えて逃げるように走った。
もうすぐ、壊れる。
わたしの涙腺は後ろに瞬くんの姿が見えなくなった途端に限界を迎えて、崩壊した。