一生に二度の初恋を『あなたへ』
「よし、大丈夫」
ゴミがなく、机が整頓されているのを確認をすると教科書をバックに入れて教室を出た。
静かだな。
カラフルな飾り付けだったり、呼び込みの看板だったり、教室や自分の周りは賑やかなのに、人が少なくて靴音が妙に響く学校はわたし一人を感じさせる。
こんな時間、そうこんな時間が無ければ、あの日のことなんか思い出さないのに……。
早足で逃げるように玄関まで行くと、下駄箱を無造作に開いてローファーに履き替えた。
「……ずっ」
鼻をすする音が聞こえる。
泣き声?に聞こえたような……。でもこんな時間に一人で泣いてる人なんている?
音の方向を探しながら靴箱を閉めて伺うように外を見た。
玄関の段差を降りた先で向かいあっている人が二人見えた。
わたしの知っている……二人に見える。
片方の男子の方は気まづそうな顔で女の子を見ていて。女の子は。
泣いていた。
そして近づく度に確証のないわたしの推測は、はっきりしたものになっていった。