一生に二度の初恋を『あなたへ』


その後わたしは証拠隠滅……なんて言ったら人聞きが悪いけど、ノリで手紙の封をしっかりと閉じて綺麗に机の中に取っておいた。


もちろんその一通以外の手紙は見ていない。



遠距離恋愛……か。


遠く離れていても誰かを想う心。



そういう恋もいいな。わたしにとっては夢のまた夢。

羨ましい限りだね。


今日もそんな愛の詰まった手紙なんだろうな、憧れの眼差しで届いた手紙を見た。



だけどそれと同時に心配にもなる。

わたしの家に来るってことはその人にこの手紙は届いていないってことになるよね。


大丈夫なのかな?今時メールとか電話とかあるし心配ない?


……じゃあ。どうしてそうと分かっていてこの人がこれを送り続けているのだろうか?


一つ疑問が出ると次々と色んなことが気になり始める。



一体どんな人がこれを送っているかな。

かっこいい人かな。大人の人かな。学生かな。


うーん…あの文章からして……。



差し出し人の正体の手がかりとなる手紙を今すぐ開けたいという衝動に駆られるけど、今日もそこは自制心をかけた。

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