一生に二度の初恋を『あなたへ』


結愛ちゃんの表情は涙を拭った瞬間に強ばった。


「ごめん優。わたし。春さんを見つけた」



「……え?」


「女子陸上の記録会で、顔は見れなかったけど、名前、見つけたの。
……言うか迷った。言ったら、優に対する裏切りなんじゃないかって」


「でも……言ってしまった……もしかしたら、斎藤くんの本当のゆ、うへの気持ち……知りたく…て」



結愛ちゃんの途切れた言葉で斎藤くんがどう答えたか想像できた。


泣き崩れそうになった結愛ちゃんを必死に支えた。



『逢いに行く』



斎藤くんは。そう言ったんだ。



「わたし、応援するって言ったのに……」

首を横に大きく振った。


「違うよ。結愛ちゃんは正しい。春さんは、ずっと……逢うことを望んでた、斎藤くんにとって誰よりも大切な人」

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