一生に二度の初恋を『あなたへ』


斎藤くんがやっと自分で掛けた呪縛から解放される。

そう思うと、嬉しい。
やっと幸せになれる。良かった。

良かったよ……。


「だから、いいの」

「優は何でそんなに優しいのよぉ」


結愛ちゃんの顔がまた歪む。わたしのために泣いてくれる結愛ちゃんが愛おしくて、抱きしめた。

「優しくないよ。優しくない……けど、ありがとう」


結愛ちゃんの肩に顎をのせて、遠くを見つめた。


そう。多分わたしは優しくなろうとしてるだけ。


綺麗な言葉を並べてるだけ。


だってそう思いながらもまだ胸に重く石のようにのし掛かるものがある。

外面が良いってこういうことなのかなって客観的になれるぐらいに。

本当の感情はまだ心の奥で眠っていることを、わたしは自分で気づいている。



それが。今日で消えれば良い。



完全に、きれいさっぱり。
だって、斎藤くんがそう言った時点で、この恋は完敗。

いや、その前に。



最初からこの恋は終わってたんだから。


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