一生に二度の初恋を『あなたへ』
段ボールを積み重ねて持っていた女の子がわたしの横を通り過ぎた瞬間に、わたしの背中は少し押された。
目の前に来た瞬くんの顔。恥ずかしいのに何故か目がそらせない。
澄んだ瞳。
細かい肌のキメ。
初めてあったときも白く吸い込まれるようなオーラを持ってた瞬くんだけど、夏休みの影響で肌が少し黒くなっているのにも関わらず、それは変わらない。
カッコいい、けどそういう軽い言葉じゃなくて、神聖な雰囲気を醸し出している……ってそれも言い過ぎか。
「……看板移動させとく。あ……あと俺のクラス劇やるから、見に来て欲しいな。じゃあね」
何事もなかったかのように、瞬くんはわたしと離れて看板を軽々と持ち上げていった。
例えば……例えばだけど、わたしが瞬くんを好きになってたら、幸せな恋が出来てたんじゃないかな。
瞬くんみたいなすごい人と両想いになれるとかそういう意味じゃなくて……ただただ好きで、たまに喋れたら嬉しくなって。
そんな、理想の片想い。
――何で斎藤くんなんだろう。
どうして、わたしにはあの人しか見えないのだろう。