一生に二度の初恋を『あなたへ』


劇は……第二体育館か。

クラス全員に配られる文化祭のしおりといういかにも先生が作ったような紙を取り出す。

渡り廊下渡ればすぐそこだし、そんな焦ることないね。



「二年五組プラネタリウムやってるよー」

「調理部のクッキーもうすぐ売り切れでーす!!」


文化祭の賑やかさはわたしの心のなかにある嫌なもの全部消してくれる。

だから普段静かな方が好きなわたしも、賑やかさが好きになれる。


ずっと続けばいいのに。



外へ出るドアを開けると、渡り廊下の冬の始めのような風の寒さに、ふぅと意味もなくため息を吐いた。

すると、聞き慣れた声がした。



「……高梨!!」



閉めようとしたドアをこじ開けるように必死で開けると、手を掴まれた。


何で……え?何が起こったのだろうか。


「――どう、したの?」

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