一生に二度の初恋を『あなたへ』
「ただいまー」
返って来る声は無いけど、いつも昔の癖で言ってしまう。
誰もいない家に入り靴を脱ぎ、自分の部屋に行くと、わたしはいつものように机の引き出しの奥に手紙を入れた。
窓の外。雪がハラリハラリと舞い降りてくるのが見える。
窓に触れては消えの繰り返し。
春には程遠いね……。
まだかじかむ手を擦りながら、ついたばかりのヒーターに手を当てた。
二月。その手紙は、毎日のように郵便受けを確認しても届いてなかった。
その次の月も、手紙は来なかった。
気になりはしたけれど、わたしは手紙を机の奥にしまいこんだまま、その存在を徐々に忘れていった。
そして冬は終わりを告げ。
高校二年生、春。
わたし高梨 優は、運命的な出会いを果たす。