一生に二度の初恋を『あなたへ』
「高梨。俺、何も言わなかったらまた期待するから……。
あの日の、あの泣きそうな顔が拒絶じゃないってまた自惚れるから、振るなら速く振ってほしい」
頭を下げる斎藤くん。
わたしも頭を下げて、目をギュッと瞑った。
こんなチャンスもう、多分この先無い。
「――わたしも、斎藤くんのこと…」
「尚知らない?もう交代の時間なんだけど」
外から同じクラスの長沼さんの声がした。
「そういう答えなんだよな?」
顔色を伺うようにわたしを見上げて、目があうと、斎藤くんの顔は全部真っ赤に染まりながらも笑顔になった。
わたしは頷いた。
「良かった……」
「俺、本当に嫌われたかと思ったんだ。相手の気持ちも確かめずに強引にあんなことして。本当に、良かった……」
誰かを想うその何とも言えない顔が、わたしに向けられてる。
わたしも斎藤くんを笑顔にさせること、できるんだ。