一生に二度の初恋を『あなたへ』
劇がもうすぐ始まると人づてに聞いたわたしは、渡り廊下のドアを勢いよく閉じて、第二体育館へと走りながら。
頭の中を整理して、まだ想像さえ出来ないくらいの未来のことを考えた。
戻って来たら、わたしからも『好き』って言おう。
笑顔になれるようなこと、もっと言おう。
沢山思うことはあったけれど、それだけは絶対にしようと心に決めていた。
もし何かあっても、わたしが想いを伝えれば、斎藤くんを底から救い出すことができるって。
本気で思ってた。
けど……。現実は、そんな簡単にはいかなかった。
この街に帰って来たあなたの笑顔は。わたしにはどうにもできないくらい。
消えていたんだ。