一生に二度の初恋を『あなたへ』
まだしっかり伝えてない。
高梨が待ってる。
約束したんだ、帰ってきたらって。
――父さん。どうしたんだよ。何があったんだよ。
雷斗は、俺の弟はどこいったんだよ。
浮気ってどういうことだよ。
このぐちゃぐちゃな家は、崩壊した母さんは、家族は、どうなってんだよ。
疲れが最高潮に達したのか眠けが襲って首を落としたとき、ドアが開く音がした。
暗い部屋に光が差し込む。
「尚。速く」
久しぶりに聞いたその声は、俺の声と間違えそうなほど似ていた。
「父さん……」
「母さんが寝てるうちに速く行け」
俺の手を引き立ち上がらせ、ただ俺に背を向けながら前を歩く俺の父親。
聞きたいことは沢山あった。
でも俺は溢れ出そうな色々なものを押さえ込んだ。