一生に二度の初恋を『あなたへ』


まだしっかり伝えてない。



高梨が待ってる。

約束したんだ、帰ってきたらって。




――父さん。どうしたんだよ。何があったんだよ。


雷斗は、俺の弟はどこいったんだよ。


浮気ってどういうことだよ。


このぐちゃぐちゃな家は、崩壊した母さんは、家族は、どうなってんだよ。



疲れが最高潮に達したのか眠けが襲って首を落としたとき、ドアが開く音がした。

暗い部屋に光が差し込む。


「尚。速く」


久しぶりに聞いたその声は、俺の声と間違えそうなほど似ていた。



「父さん……」

「母さんが寝てるうちに速く行け」


俺の手を引き立ち上がらせ、ただ俺に背を向けながら前を歩く俺の父親。


聞きたいことは沢山あった。

でも俺は溢れ出そうな色々なものを押さえ込んだ。

< 139 / 215 >

この作品をシェア

pagetop