一生に二度の初恋を『あなたへ』
俺は最後に一番聞きたかったことを聞いた。
「父さん、浮気してないよな?」
父さんは笑って、大きく頷いた。
当たり前だろ、そう言うように。
「母さんは何とかする。これは俺たちの問題だ。尚は気にせず愛しの春ちゃん探しだの何だのしてろ」
……気づいてたのかよ。
一人暮らしをしたいと言った俺に何一つ反対しなかった父さん。
はぁ……敵わないな。全部バレてる。
けど今逢いたいのは違う人だ。
俺が逢いたいのは、高梨 優だよ。
これからどうするかは、まだ決まらない。どうなるかも分からない。
父さん一人に母さんを任せる訳にはいかない。
けど、今は、高梨に逢いたい。逢わなきゃいけない。
だから、もう少し待ってくれ。
高梨ごめん。待たせて。
いや、でも。高梨が俺に逢いたい訳ではなくて。俺が高梨に逢いたいのか。
俺はいつからこんなに高梨のことを好きになって、求めるようになったのだろうか。
俺を本当の意味で受け入れてくれたのは、家族でもない、親友でもない、春でもない、高梨 優という人だから。だからなのかもしれない。
月とぽつんぽつんと所々にある街灯だけが夜道を照らす。今の俺には、そんな光さえも眩しかった。
そして俺はただ走った。