一生に二度の初恋を『あなたへ』
・夕焼け色の儚い世界
「斎藤くん……斎藤くん?」
「あ、あぁごめん」
春さんのところから戻ってきてから、斎藤くんは何かを考えるように険しい顔をしたり、遠くを眺めたりすることが多くなった。
たまにこうやって呼んでも、気づかないときもある。
斎藤くんが学校に来た日、いつもはわたしの方が早いのに斎藤くんは学校にもう来ていて、わたしが登校すると一目散に走って来て抱き締められそうな勢いで驚いた。
だけど周りに人がいたからか、躊躇したように止まったけど。
そして心がどこか遠くの場所に行ってるような、そんな笑顔で『ただいま』と言った。
その笑顔は今も継続中だ。
でも周りの人の反応がいつもと変わらないところを見ると。気付いてないみたいで、わたしだけ斎藤くんの変化を感じていることに違和感を感じた
みんな、どうして気づかないの?
こんなに、斎藤くんが空っぽな笑顔で笑ってるのに。わたしに見せる笑顔とみんなに見せる笑顔は違うの…?
春さん、結愛ちゃんが言っていた佐藤 春は同姓同名の別人だったらしい。
気にしてなさそうに話してたけど、それが原因だとしたらわたしはどうすればいいのだろう。
わたしにできること、元気付けるにはどうすればいいのかな。
「帰ろ?」
「あぁ」
そしてあれからわたしと斎藤くんは微妙な関係。