一生に二度の初恋を『あなたへ』
付き合ってない……と思う。たまに一緒に帰るぐらい。
何も言われてないし、何も言ってない。
沈黙ばかり。だけど、たまに急にわたしの手を掴んだり、頬に優しく手を当てて触れたり。
切なげな目をしたり。
どういう意味があるのかは分からない。
ただ言葉は無くても、大事にしてくれていることは感じた。
春さんはもちろん大切な人。でも斎藤くんはわたしも大切にしてくれてる。
今はただそれだけでいい。
話してくれるまで、わたしはずっと隣にいる。
斎藤くんの気持ちが分かったあの日、斎藤くんの側にいていい権利を貰えた気がするよ。
学校の外に出ると、夕陽が住宅街の家と家の隙間からチラリと見えた。
光がところどころに差し込んでいる。
もう少し、わたしが背高かったら全部見えるのに、精一杯にジャンプしながら夕陽の見える位置を探した。
「ぷっ。何やってんの?」
あ、みっ……見られた。
「……夕陽見たくて」
「何かに似てるんだよな……。あ!!あれだ、飛び魚だ飛び魚」
飛び魚!?初めて聞いたよ、そんな例え。