一生に二度の初恋を『あなたへ』


驚いた顔を見せると斎藤くんは笑う。でも生気がない笑顔を見ると胸が痛んだ。


それに気付きながらもわたしは敢えて明るく言葉を返した。



「斎藤くん魚好きなの?初めて喋ったときもそんなこと言ってた」


驚いて口をパクパクさせてると魚みたいって、何の魚だったかなって、斎藤くんとの思い出は鮮明に思い出せる。



「や、別に俺は好きじゃないけどさ。父さんが好きで、家で鯉とか色々飼ってて……」


「さすがお金持ちだ……」


あれ?そういえばお父さんの話初めて聞いたかも。

考えてみると、斎藤くんの家族の話って本人から聞いたことないな。


「お父さんとは仲良しなの?」

「まぁ一応。でも昔から仕事ばっかの人だったから殆ど家にいなかった」


「そっかぁ」

でも仲が良いのは羨ましい……な。

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