一生に二度の初恋を『あなたへ』
でも、そうだよね。
現実に不満がある訳じゃない。
むしろ一緒にいれる、それだけで幸せだ。
でも……儚い今が愛し過ぎるよ。
「夕陽、沈んだね」
周りが一気に暗くなる。ちらほらと街に明かりが見え始めた。
「……俺、もう一緒にいられない」
「……え?」
斎藤くんの言葉がわたしの頭を真っ白に染まらせた。
「春に逢いに行った後、実家に一回戻ったんだ。そしたらさ」
話す度に青ざめていく斎藤くんの顔に現実感を感じて身が震えた。
わたしにとってはどこか違う世界で起きているようなこと、でも斎藤くんにとってはそれが現実。
「母さんを支えて、守らないと、いけない。父さんと弟と俺の……家族全員で」
わたしに何も言えるはずないよ。そんなこと言われたら。
家族が大事なのはわたしも同じだから。
家族を、お母さんを守るために頑張るのはわたしにとって普通のこと。
だから……だから……だけど……。
「……わたし……は?」