一生に二度の初恋を『あなたへ』
そんな気持ちはわたしの一方通行な感情かもしれないけれど「一緒に帰ろう」そう誘ってくれたのは斎藤くんだから、同じ気持ちだと信じたい。
足音が廊下から聞こえた。
斎藤くん、かな?
ドキドキするけどなるべく待っていた感じを出さないようにと、英語の課題に目を向けてシャーペンを持つ。
教室のドアが開いたのが分かって、目だけ後ろを向いた。
「ごめん。尚じゃなくて」
「しゅっ…瞬くん。全然‼︎そんなことないよ‼︎」
「今日あいつ道具の片付けの係だからさ。待っててあげて」
そっか。陸上部の片付けは当番制なんだっけ。
速く来て欲しいなんて、そんな我儘言えないや。
「瞬くんはそれだけを伝えに?」
「いや。高梨さん、泣いてないかなと思って」
さらりと言った瞬くんは机の端に下を向きながら座って、上目遣いで窺うようにこちらを見る。