一生に二度の初恋を『あなたへ』
考えるのは止めよう。
悲しくなるだけだもん。
靴を履いて外に出ると小雨が降っていた。さっきまでは降ってなかったのに。
どうも、雨の日は苦手。
雨と黒い雲。そのたった二つだけでわたしの胸を痛くさせる。
雷が鳴っていないのはせめてもの救い。
あの雨の日のこと、勘違いだったって分かった今も、あのときの感情を思い出してしまう。
もう、何も分からなくなってしまった絶望的な感情と、わたしのしてしまった醜い行為を。
それに。
ーーお父さんの言葉がいつもに増して荒くなるのは、雨の日だったかもしれない。
「貸して…もらえる?」
わたしは持っていた傘を後ろに隠しながら片手を出す。斎藤くんにはばれてるかもしれないけど。
不思議な顔で手渡された黒い傘を開いた。
あのときとは違う。
わたしの好きと斎藤くん好きは、すれ違ってないのだから。
それを確かめるように。
少しでも、寄り添いたくて。