一生に二度の初恋を『あなたへ』
でも何故か胸が騒つく。
「やっ、やばいかっこいい」
一気に注目が集まったその人に、斜めの席の女の子が漏らした言葉が耳に入った。
確かにかっこいい……よね。だから少しドキッとしたのかも。
無造作に跳ねた黒髪に目鼻がくっきりした整った顔立ち。
最大の武器はその印象的な笑顔。
ちなみにわたしの席の隣っていうのは一番後ろの窓側で。
窓の外に見えるグラウンドの景色と、その人の横顔が何故か合っているような気がした。
スポーツやってそうな顔だからかな。
サッカーとか、野球とか。あっ、走るの速そうだから陸上とか。
ユニホーム姿のその人の姿を浮かべては消してみる。
そんなわたしに気付いたのか、またちらっと見られたような気がして咄嗟に前を向いた。
そして始業式から数日が経つと。
「斎藤、お前部活入らないのかよ」
「だよなー俺も思った。サッカー部とかどう?体育のとき上手かったじゃん。お前なら初心者でもいけるって」
いつの間にかその人はクラスの中心になっていて。
「あぁ…まぁな。考えとく」
わたしは隣の席なのに別の世界の人間すぎて、話すどころか近づくことさえできないという……。