一生に二度の初恋を『あなたへ』
「どうする?」
目の前には何故か自分がいた。
黒くて暗い場所のはずなのに、目を凝らさなくてもハッキリとその人物は見えて、わたしと少し離れた場所に立っていた。
光を纏ってるようにその人の周りには白い靄がかかっている。
そして自分がそこにいるのなら、わたしは誰なんだろう。
どう考えてもわたしは、自分だ。
「わたしは春になりたい」
わたしは自分の問いに返した。そう正確には、春の問いに。
「好きにしていいよ。優が辛い自分の記憶から逃げたいのなら、わたしに変わってもいい。
わたしは大切にされてたことを知れた。だからまた面倒くさいことにはなるけど、幸せに暮らせる。
けど、一つだけ言っておく」
「わたしを大切に思ってくれる人ががいたように、優を大切に思ってくれてる人はちゃんといる。
よく考えてよ」
そう言ってわたしを心配しそうに眉をひそめる春は、多分わたしに逃げて欲しくないんだ。