一生に二度の初恋を『あなたへ』
「ありがとう、春……」
「お礼なんていいよ。だって春は優。優は春でしょ?
同じことを二度も繰り返させたくなかった」
「……春は自分を捨てたこと、後悔してる?」
「そりゃするよ。だって後から気付いたことが多すぎた。気付くためには、もっと本音になって、相手の本音も聞くべきだった。
それにわたしの初恋は叶わなかったから」
春はサラッとそう言って、笑った。わたしの初恋も、春の初恋も同じ斎藤くん……そんなことに今更気付く。
「わたしの分も二度目の初恋を叶えるのは、優だよ」
叶えるも何もわたしの初恋はもう終わってしまってるよ。
「わたしには、叶えれない」
「でもまだ好きなんでしょ?好きじゃなくなるまで恋は終わらないよ?
……あぁそろそろ、戻らないと」
春の身体は光を増して、わたしの方に向かって一歩ずつ足を進める。
「……春、大好きだよ」
春はわたしを見て思いっきり笑った。
あぁ、わたしが羨ましいと思ったあの斎藤くんの部屋にあった写真と同じ笑顔だ。
わたしも春と同じように思いっきり笑うと、その瞬間わたしと春は重なって一つになった。