一生に二度の初恋を『あなたへ』
・おかえりなさい
夢から覚めるように目を開けた。
目の前には天井があって、消毒液のにおいは学校の保健室を思い出させた。
でもこんな夜明けに、保健室に来ることなんてないよね。
今が何時なのかは分からないけれど、まだ暗い中でカーテン越しにうっすらと太陽の光が感じられた。
わたし、病院に運ばれたんだ……。
寝返りをうつように横を向くと、隣では疲れたように机にうつ伏せになってお母さんは寝ていて、椅子に座りながら笑ちゃんが首を落としていた。
心配かけたんだろうな……二人をじっと見ていると、笑ちゃんが何かに気付いたのかゆっくりと目を開けた。
「春……?」
「……ごめん、春じゃない」
笑ちゃんは力が抜けたように椅子から落ちて床に座り込んで、涙腺が崩壊したかのように泣き出した。
「わたしのせいで……わたしが春に逢いたいなんて言ったせいで、わたしが優を殺してしまったのかと……思った……。春も優もわたしが殺したんだって……」
「わたしは、優だけど春の記憶はちゃんと戻ったから。
誰も、後悔する必要なんて……なかったんだよ」