一生に二度の初恋を『あなたへ』
『大切で、大好き』……わたしは、その言葉をずっと待ち望んでいたのかもしれない。
言葉にして欲しかった。
そして言葉にして伝えたかった。
言葉にしないでも感じれることはあるかもしれないけど、言葉にしないと感じられないことだってある。
気付けないことだってあるんだから。
「わたしも、大好き」
お母さんの耳元で小さくわたしは呟いた。
病院から記憶を辿りながらわたしは目的地へと向かう。
わたしの前住んでいた家に、そしてその向かいにある斎藤くんの家に。
しばらく歩いて何とか辿り着くと、周りの景色も雰囲気もお父さんに会いに来たときとは違って、懐かしい気持ちになった。
記憶があるのとないのでは、こんなに見方が違うんだ。
全てが思い出の詰まった場所。
斎藤くんの家の前で勇気を出してチャイムを鳴らすと、大きい庭の奥から歩いてきたのは、斎藤くんの髪型とよく似た男の人……斎藤くんのお父さんだった。
何回かお世話にはなってたっけ。