一生に二度の初恋を『あなたへ』


もう顔見たくないってこと?

関わりたくもないってこと?



時計の針が進む度に色んな不安が押し寄せてきた。


事故に遭ったりとか、してないよね?お願い、早く来てよ。


少しずつ足も痛くなってきて立ったり座ったりを繰り返す。

スカートの隙間から風が入ってくる。



諦めることも考えた、あまり夜遅くなるとお母さんも心配するだろうから。

冬至はもう随分前に過ぎたけれど、暗くなるのが早いのには変わりない。

太陽はいつの間にか沈んでいた。


でも……もう少しだけ、もう少しだけと先延ばしにして期待してしまう。




「高梨‼︎」

遠くから呼ばれた気がすると、誰かが必死に走ってくるのが小さく見えた。そんな姿に自然と笑みが溢れる。



良かった……。相変わらず、速いなぁ……。


すぐに顔がはっきり見えて、マフラーも手袋も何もしていないトレーナーにズボンだけの斎藤くん。


そして陸上部の脚力は未だに衰えていない。

……来てくれた。

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