一生に二度の初恋を『あなたへ』


斎藤くんが考える動作をしながら笑うと

「あはははは――…」


何故かわたしも口角を上げて笑ってしまった。



でも…魚みたいとか言われたこの状況とかもう、色々恥ずかしすぎるよ……。


キャパオーバーです。



わたしは斎藤くんに背を向けると勢いよく走りだした。



「えっ、ごめん!!」


『こちらこそ逃げちゃってごめんなさい!!斎藤くんのことはもちろん分かります』



わたしは職員室へと走りながら斎藤くんに聞こえないような、小さな声でそう溢した。




ホッチキスを借りて、教室に着くと一息。


あの笑顔は強力だよ。もしかしたらみんなあの笑顔に引き寄せられているのかもしれない。

凄いパワー……。



あの笑顔を思い出すと身体中がドキドキして、勢いよく走り過ぎたせいもあると思う。


そういえば隣の斎藤くんの席、プリント多いし机借りていいかな?


ーーいいよね。



自問自答して、机を引き寄せると作業を始めた。

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