一生に二度の初恋を『あなたへ』
駄目駄目。自分でやるって決めたんだから。頑張ろ。
自分の席に座って、何枚かで組になった先生たちのよく分からない書類を淡々と留めていった。
しばらくすると、誰かがこっちに走って来る軽快な足音が聞こえてきた。
ん?誰か来る?
教室のドアが一気に開くと風が勢いよく、舞い込んで来てプリントが飛びそうになるのを必死で抑えた。
「はぁ……はぁ……」
息を荒くして手で額の汗を拭っているのは。斎藤くん。
忘れ物でもしたのかな?
戻ってきてくれたって解釈したいけど、していいの?
「はい」
わたしの目の前に出されたのは学校の自動販売機で売られている『Sweetカフェラテ』。
顔を見上げる。
「甘いの嫌い?俺これ結構好きなんだけど――ていうかこの学校入れ組みすぎだろ。
迷いそうになったわ――…」
「……ありがとう、斎藤くん」
わたしはカフェラテを受け取って両手でギュッと握りしめた。
甘い甘いカフェラテ。実はわたしの学校の自動販売機の中での一番お気に入り。
「よかった、高梨、俺の名前、覚えててくれた」
そう言って人気者のキラキラ転校生斎藤くんは、またあの強力な優しい笑顔を見せたんだ。