一生に二度の初恋を『あなたへ』
ハル?
……それって季節の春?斎藤くんも春の風って思ったのかな?
でもそんな表情には見えない。
「あ……と、ごめん。転校してきたときから思ってたんだけど、高梨と間違えそうなくらい顔も声も瓜二つの人がいて。
佐藤 春って言うやつなんだけど……て知らないやつに似てるとか困るよな。
ごめん。今の忘れて。
あ、そういえばさ、昨日のテラハ見た?」
斎藤くんは早口で言葉をまくしたてて、わたしにも分かるぐらいあからさまに違う話題に変えた。
一瞬見せたいつもとは違う、何かに呆気にとられたような顔。その春って人と、何かあったのかな。
それと……。
テレビの話に相づちを打ちながらもずっと考えてた。
どこかで聞いたことある、名前。
サトウ ハル。
誰だっけ……思い出せない。もしかして気のせい?
よくありそうな名前だし。
サトウ……サトウ……。でも何だろう心の中がモヤモヤする。
頼まれた仕事を終わらせると、職員室に資料を持っていき、斎藤くんが呼んだ名前を頭の中で繰り返しながら、玄関に急いだ。