一生に二度の初恋を『あなたへ』
タイミング悪いなぁ……電車が来るまで一緒にいたいなんて思ったのに、これだ。
でも少しでも長く一緒にいれたことは嬉しかった。
斎藤くんと別れた後いつもの電車に揺られて何駅か過ぎると、わたしの降りる駅のアナウンスが聞こえて電車を降りた。
それにしてもサトウ……ハルって……。
家の前に着くと、ほんのりとカレーの匂いがした。
お母さん、今日は早かったんだ。
よく食べてるはずなのに、懐かしく感じる甘さと辛さが混ざり合う味がわたしの口の中に広がると、お腹が締め付けられるように鳴った。
うわぁっ、恥ずかしっ。だっ誰も聞いてないよね。
「ただいまー」
「優。お帰りなさい」
お母さんは菜箸を持ったまま、少し疲れが見える表情で玄関まで出てきてくれた。
今日は肩もみでもしてあげようか。
お母さんとお父さんが離婚した中二の冬。お母さんと二人きりで過ごしてきて、もう数年。
お父さんはわたしたちが前住んでいたアパートに、わたしたちは前から三人で引っ越す予定だったこの新しい家に来た。