一生に二度の初恋を『あなたへ』
お父さんは、家は譲ってくれたし、生活費とかのお金の少しは出してくれてるらしいけど、やっぱり二人で生活していくには足りない。
お母さんは働き始めて、わたしもバイトをしようと思ったけど、この高校は進学校でもあるからバイト禁止で駄目だった。
内緒で、とかも考えたことあるけれどそんなことしてバレたらお母さんに迷惑をかけるだけだし、お母さんもそこまでしてほしくないって言ってた。
お母さんは、それ以外にも辛いことだってあったはずなのに……それでもわたしの前ではいつも笑ってくれていた。
何回か泣いた後のような顔は見たけれど、そんな素振りを見せずに、いつも笑顔でいようとしてくれたこと、知っている。
わたしは、声をかけたくても、どういう言葉をかければいいか分からなくて、何も……言えなかったけれど。
お母さんを辛くさせた離婚は、わたしのせいなのに……なんて薄情なんだって自分でも思う。
「お母さん、ずっと本当にありがとう。
わたし良い大学行って、お母さん楽にするね」
何でだろう。
いつも言えない言葉が、今日は頭で考える間もなく出てくる。
言葉が落ちてくるように。