一生に二度の初恋を『あなたへ』
『逢いたい……好きだ』
そうだあのラブレター。何で今の今まで気付かなかったんだろう。
ラブレターと春さんを探す斎藤くん。
全て繋がった気がした。
斎藤くんが転校して来た理由は……何か理由があって音信不通になった春さんに逢うため?探すため?
この手紙の差出人は斎藤くんで――。
春さんが好き……なんだよね。
低確率の偶然。だって学校が同じで、学年が同じでクラスも同じわたしの元にその手紙が届くなんて……そんなことある?
住所は間違えてた。だってここには佐藤春なんて人はいない。
郵便局も家の表札がずっとお父さんの名前の『佐藤』になってるし、疑わなかったんだと思う。
でも、どこかで郵便局か配達の人が気付いたら手紙はわたしの元に届かなかったし……。
それさえも偶然。
重なり過ぎた偶然に何だか怖くなる。
そしてこの手紙は、春さんに届いていないんだよね。
わたしがこれを返したら、斎藤くんの笑顔が消えてしまうのかな。あの笑った顔が歪むところなんてわたしには想像できなくて。
胸が締め付けられたように痛かった。