一生に二度の初恋を『あなたへ』
わたしがずっと持ってる?
そうすれば斎藤くんは何も知らないし、悲しむことはないよね。
でもいつかバレるよね…住所はもう分かってる訳だし。
どうすればいい……?どうすれば斎藤くんが傷つくのを最小限にできる?
必死に頭を使った。
けれど、最善の策は見つからなかった。
そしてわたしが最終的に選んだ答えは『早く斎藤くんに手紙を返して、伝えること』。
わたしは手紙を輪ゴムでまとめて、カバンの中に入っているファイルに入れた。
わたしが持ってるのは違う……違うんだから。
人のものを盗んだみたいでわたし自身だっていい気しないでしょ?
そうやって傷つけてしまうことの言い訳のように、言い聞かせた。
遠い存在だった、憧れだった、隣の席の斎藤くん。
そんなすごい人が今日たった一日でわたしにとって近い存在になってしまった。
だから、こんなにも傷つけてしまうことに躊躇いがあるんだ。
わたし、駄目だなぁ……。
少し濡れたハンカチに包まれた桜の花びらから、優しい香りがして、何故か鼻の奥をツンとさせた。