一生に二度の初恋を『あなたへ』
――ここ数日ずっと伝えれてないよ。
春さんの手紙のこと。
伝えたいのに、伝えなきゃいけないのに、喉まででかかった言葉はどうして止まってしまうのだろう。
傷付けたくない……斎藤くんの反応を色々想像してみるけれど、どれも悲しそうな顔をしているところしか想像できない。
だから、なんだろうけど…。
でも考えただけで、何故かわたしまで苦しくなって、胸が痛くなる。
斎藤くんを傷つけたくない、それだけでわたしまで痛くなるもの……?こんなことは初めてだ。
わたしの心はこの頃、変な気がする。
「高梨。この問題いけるか?」
「えっ!?」
潮波先生に名前を呼ばれて今までの思考は全て飛んで行き、虚ろだった目も一瞬で開いた。
えっ……えっと……。
何だろうこの数式の羅列は。見たこともない記号まで出てきている。
空気が少しずつ重くなってきているのが分かって、とりあえずイスを引いて黒板の前には立ってみるけど、何が何だか……。
これは『分かりません』って言うしか道は無いのでは…。
今まで得意科目の数学だけは逃さずに理解してきたのに。少し悔しい……。
「わっわか……」
「先生。俺、この問題自信あるんで、やっていいですか?」