一生に二度の初恋を『あなたへ』
「ありがとなっ。如月、高梨」
「いえいえ。速くしないと遅れるよ?」
結愛ちゃんがそう言うと斎藤くんは手を合わせて教室に向かって走って行った。
わたし、何にもしてないんだけど…。
それでも『ありがとう』って言ってくれた。
そんな、優しい人なんだよ斎藤くんは。
わたしの気持ちが辛いとかどうとか言ってる場合じゃない。伝えるのが最善なんだから。
明日は土曜日だし、今日中には伝えよう……春さんの手紙のこと。
よし、今日の帰りまでの目標。
――キーンコーンカーンコーン……
下校を知らせるチャイムがわたしを責め立てるかのように鳴り響く。
何してるんだろわたし……。
伝えるとか以前に一言も喋れてないし……。
だって隣ではまた沢山の人に囲まれて話の中心になってる斎藤くん。こんな状態で話せるわけないよ。
「はぁ……」
「どうした?高梨」
集まった人の壁の中からひょこっと斎藤くんが顔を出した。