一生に二度の初恋を『あなたへ』
「これ高梨のか?」
先生が片手で書類の中から出したのは『佐藤 春様』と書かれたあの手紙。
…何で先生が?
「あの、それ……わたしのです」
いつの間に…?ひとつだけ思い当たるのは数学のプリント渡したとき。
「ファイルから落ちたのを拾った」
あぁ何やってんだろ。
これは斎藤くんにとって、春さんにとって大事な手紙。そんなこと分かってたはずなのに。
それを気付かずに落としてしまうなんて、わたし最悪…。
でも、まだ先生で良かったかな。これが違う人だったら……。
色々な状況が想像できた。下手したら斎藤くんを傷つけることになってた。
やっぱりわたしからしっかり斎藤くんに渡さないと――。
手紙を受け取ろうと封筒の端を持つと。
先生は怪訝な顔でわたしを見た。
「ちょっと待て」
先生はギュッと手紙を持って、その手を離そうとしなかった。声は明らかにいつもより静かで低い。
え、なんで…。