一生に二度の初恋を『あなたへ』


「佐藤 春、高梨の知り合いか?」


知り合いじゃないけど…ここで『そうです』って言わないと変に思われるよね。何で手紙持ってんだって話。



「そうですけど…」


嘘ついてごめんなさい。先生。

目を逸らしながら答えた。



「春……佐藤 春はどこにいる?知っているなら教えてくれ。

俺は、俺はあいつに――…伝えないといけないことが……沢山あるんだ」


「生きてるなら…あいつが生きてるなら……教えてくれ」



先生はいつもの様子と違って、苦しそうに、声は小さいものの叫ぶようにわたしに問いかける。

わたしは先生のその必死な表情に呆気にとられて固まってしまった。



「知らないです」


宛先が書いてあり、手紙を持っているのに居場所を知らないなんて可笑しい話だと先生は思うだろう。

でも本当に知らないし……教えることなんてできない。



わたしの言葉に我に返ったのか、先生は顔を上げて、いつもの顔に戻った。



「そう、か。すまない。

俺、生徒に問い詰めるとかやっぱり教師失格だな」



……やっぱりって?わたしの知ってる春さんと何かあったってこと?


それに、何で――。



手紙をわたしに渡すと、重そうな資料を持って何事も無かったかのように廊下を歩いていく先生。

でも足はおぼつかないように見えた。


わたしの頭の中は沢山疑問が浮かぶ。

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