一生に二度の初恋を『あなたへ』


でも……もし、わたしの家に佐藤って表札が無かったら、斎藤くんのところに手紙は戻ってくるんじゃないだろうか。


斎藤くんは知らないだろうけど、わたしの離婚したお父さんの名前は佐藤だから……言おうと思ったけれど、口を閉ざした。



斎藤くんがそう解釈してるのならそれでいいのかもしれない。

斎藤くんをこれ以上悩ませたり……笑顔を消したくない。


その友達が適当な住所教えて、何も考えてなかったとは思えないけど……偶然だよね。


そうだ、偶然。


たまたま春さんの名字と、表札が同じだっただけ。



「『わたしなんか生まれてこなきゃ良かったかな』

……春が俺と最後に会ったとき初めて俺の前でそう呟いてさ、俺がそのとき異変に気付いていれば…」



ーーガタッ

「高梨!?」



急に頭痛が起こり、わたしは咄嗟に近くにあった机に片手をついた。

後頭部がドン…ドン…とハンマーで殴られているかのように痛くなる。


身体が小刻みに震えて、止まらなくて、早く収まれと思いながら目を瞑った。

震えと、呼吸が荒くなるのを必死に隠しながら。

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