一生に二度の初恋を『あなたへ』
「分かってるよ。
斎藤くんはわたしには本音で話せって言ってるのに、自分の本音はあんまり出さなくて、それを謝るバカ正直ってこと」
あまりわたしが得意としないおちゃらけた口調で冗談ぽく言うと
「高梨の毒舌新鮮だけどちょっと傷つくなぁ」
そう冗談のような口調で返して、笑ってくれた。
斎藤くんがそうやって笑ってくれると嬉しい。
多分斎藤くんはしっかりした強い人だと思われるのが重荷なんだよね。
そんな人と思われると弱い部分を見せれないから。
斎藤くんはみんなの思ってる『斎藤 尚』の期待に応えようとするから。
だから今までも本音をみんなに見せられなかった。
これから、わたしは斎藤くんの笑顔を、作っていけるかな。
ううん、違う。作っていくんだ。
たとえこの初恋が実らなくても――…。
ただのクラスメイトだとしても――…。
わたしは――それが出来れば。
いいんだよ。
心に残る苦味から目を背けて、何回もわたしは自分にそう言い聞かせ続けた。